「かかりつけ医」とは

2015年12月15日

 最近、一般紙やテレビなどでも「かかりつけ医」などという言葉を目にする機会が多くなった。日本の医療制度は「いつでも・誰でも・好きな医療機関を受診できる」というのが大きな特徴となっている。それに対し、諸外国の様に、まずは地域の医師に診てもらい、必要に応じて総合病院を紹介してもらい、受診をするような仕組みを導入しよう、という考え方が広まっている。そうした動きの背景にある事情や、実現に向けての課題などを解説する。


限りある医療資源有効的に活用を
花子 最近、新聞などで「かかりつけ医」などという言葉を見たり聞いたりするけど、どういった意味なの?
太郎 自分のことをよく知っていて、病気のときはもちろん、病気になりそうなときや、病気になるのを防ぐために様々なアドバイスなどを行ってくれる医者のことだよ。これまでにも「主治医」という言葉はあったけど、主治医よりももっと身近な「街のお医者さん」といったイメージかな。
花子 なぜ、かかりつけ医という言葉が一般的になったの?
太郎 日本では、誰もが好きな時に好きな医療機関に行くことができる。しかし、そのためみんなが軽度な病気やケガでも総合病院に行ってしまい、その結果「3時間待って診療は3分」といった問題を引き起こすようになった。医師や看護師の不足もあり、限られた総合病院の医療資源は、急病人や重篤患者のために使うべきだ、という流れになっている。その分、「軽度な病気や、病気かどうかの判断がつかないレベルの相談については、まず街のお医者さんに行ってもらおう」ということだね。昨年4月の診療報酬改定では紹介状の無い総合病院の初診に初診料がかかるようになったのもそのひとつといえる。
花子 「日本では」と言っていたけど、ほかの国では違うの?
太郎 例えばイギリスでは、各地にクリニックがあり住民はそのクリニックに登録し、まずはそこを受診することになっている。「交通事故で大怪我をした」などの緊急性が無い限りは、クリニックの紹介無しには総合病院を受診することはできない仕組みだ。まず、全ての患者をクリニックで診て、必要のある患者だけを総合病院に回すことで医療資源や財源を効率的に使おうという考え方だね。
家庭環境も把握各種相談に対応
花子 かかりつけ医はそのクリニックに勤務しているの?
太郎 そこの勤務医は日本語では「家庭医」と訳されるね。家庭医は医師というよりは「健康コンサルタント」的な役割が強いよ。患者の家庭環境などもよく把握しているから「気分がすぐれないのは、家庭が上手くいってないストレスから来るものではないですか?」とか「あなたの家庭では食事に脂分を多く使う傾向が強いので、生活習慣病に気を付けて下さい」などといった、病気の診察・薬の処方などとは異なることまでアドバイスをしたりすることも多い。診療予約が入っていない時間は患者宅の訪問もしている。
花子 家庭医を日本でも普及させようという考えなの?
太郎 とは言っても、日本と外国では、医療の制度をはじめ様々な点が異なるから、海外の制度をそのまま日本に持ってくることは難しい。例えば家庭医は、あらゆる症例に対応しなくてはならないので幅広い知識が求められる。したがって英国では医師を目指す学生は在学中に家庭医になるか、総合病院の専門医になるかを選択し、それぞれ専門の教育を受ける。それに対して日本の医師教育課程は専門医を育てることを主眼においているから、家庭医の様な人材を育成するのは非常に難しい。
 また、「日本は、誰もが高度な医療を提供する総合病院に自由にかかれたことが、国民の健康状態向上に寄与し、世界屈指の平均寿命を実現させた」という事実もあり、現在の制度を変えるべきではない、という考え方も根強くある。
花子 日本の現状や国民意識などに合った形での仕組み導入が必要、ということね。
太郎 日本医師会では「日本版かかりつけ医」などというものを提唱している。これは街の開業医が、午前中は外来診療を行い、午後は在宅医療を行う、などという仕組み。開業医が地域に関わる割合をもっと高めよう、というものだ。ただし、これも「午前中に在宅医療の患者の容態が急変したら、どうやって対応するのか」などの点で課題が指摘されている。医師一人で全てのニーズに対応することは困難だから、複数の医師が連携して地域のニーズに対応するなどの仕組みも必要だ。

株式会社高齢者住宅新聞社
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