旅、あきらめない
一度の経験、暮らし豊かに

2015年03月15日

より楽しめる旅行入門


 高齢者の趣味の中で圧倒的に人気がある「旅行」。家族や友人同士で旅行に行く高齢者は増えている。一方で、高齢や身体の不調を理由にあきらめる人も少なくない。しかし、現在、元気高齢者向けだけではなく、要介護者向けの旅行サービスも拡大している。一度の旅行経験が、その後の生活を活発にさせると多くの人が「旅の効能」を実感している。


千葉から滋賀へ

車椅子で母娘旅


 昨秋、要介護5の母親と故郷の滋賀を旅した50代の女性は「あの日母は、親戚らとたくさん話したり笑ったり食事もよく食べたりといつもより元気だった」と振り返る。
 法事に参加するため、女性は80代半ばの母親を連れて千葉から滋賀に向かった。母親はその半年前に親しんだ関西から千葉に移り住み、老人ホームに入居。夏場、体調を崩したりしたが、女性は「父の法事に行くためにがんばろう」と母を励まし続けた。
 一泊二日と言えども、一人で車椅子の母親を看ることは不安だった。「インターネットでプロの介助ガイドを知り、頼むことにした」
 問い合わせたのはNPO法人ジャパン・トラベルボランティア・ネットワーク(東京都多摩市)。介助ガイドの紹介を頼み、看護師として今も働く60代の介助ガイドが付いてくれることになった。ガイド料金は2日間で3万8000円(交通費、宿泊費などは別途)。
 長女は平日仕事をしているため、疲れもたまっていた。それが「出発当日、東京駅で待ち合わせたガイドに会ってホッとした」と話す。「ガイドが、『必要な介助は全部します』と、新幹線の中での食事やトイレ介助をしてくれて、任せられると安心した」
 法事に集まった親戚は母親を見て「元気そうだし、要介護5なんて思えない」と驚いた。女性は「滋賀まで連れていけてよかった」と今でも満足している。
 「この旅行が母の自信に繋がり、4月に老人ホーム近くの桜の名所にお花見に行く約束を交わした。また介護タクシーを使って出かけ、昼ごはんを食べることを楽しみにしている」
 ジャパン・トラベルボランティア・ネットワークのおそどまさこ代表は「旅行に行けないと決めつけないで」と呼びかける。「介助ガイドは介護や看護の現場経験がある人が多く、どれだけ重度の要介護者でも旅に誘いたい。人生はハッピーエンドにならなくてはいけない」と語る。


杖や車椅子でも

気兼ねなく参加


 「体力がなくなって元気な人と同じツアーに参加するのは気が引ける」という高齢者のために、大手旅行各社は杖や車椅子でも参加可能な「バリアフリー旅行」の取り組みを拡大させている。
 業界でいち早くサポートが必要な人向けのバリアフリー旅行を開始したのはクラブツーリズム(東京都新宿区)。1ヵ月間で国内旅行15本、海外旅行3本のパッケージツアー(参加者募集型)を企画、実施している。この10年間で旅行者が2倍に増えている。
 ツアー人数は20名と少人数なのが特徴。同社のテーマ旅行部「バリアフリーの旅」リーダーの畠山幸枝さんは「少人数であることで、ツアーを通して旅仲間ができて、『また旅しよう』と高め合うことができる」という。実際に参加者のリピーター率は70%超と高い。
 介護などの知識を持ち経験豊富な添乗員が同行するため、旅行中の不安や困ったことはいつでも相談できるのが心強い。足腰に不安を持っていたり、杖や車椅子での参加者が多いバリアフリー旅行は安全第一。観光するスポットを1日2ヵ所程度に絞ったり、こまめにトイレ休憩を入れたり、スケジュールにはかなりのゆとりを持たせている。「バス旅行の場合、乗り降りに30分程度時間がかかるため、高速道路のサービスエリアでのトイレ休憩は時間制限を無くし、旅行者のペースを見ながら進めていく」(畠山さん)など、高齢者の身体への負担は常に意識する。
 (以下・省略)

株式会社高齢者住宅新聞社
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