医療・介護はこう変わる

2016年01月20日

 2016年4月に行われる診療報酬改定に向けた国の議論が進められている最中だ。現在は改定の全体的な方向性が話し合われており、今後詳細を詰めていくことになる。今回は、4月以降、医療機関を受診したり介護保険サービスを利用したりした場合に、私たちにはどの様な変化が生じるのか、という点について紹介する。


エピソード① 紹介状がないとダメ?

 松田さん(68歳)の家の近くに、ベッド数が500以上もある大きな総合病院ができた。

 ロビーにはお洒落なカフェなども入っていて、まるで高級ホテルやデパートの様な雰囲気。早くも近所では「とても立派だった」などと大きな話題になっていた。

 そんなとき、松田さんは風邪をひいた。

 「いつも行くのは近くの診療所だけど、せっかくだから新しくできた総合病院に行ってみようかしら……」

 総合病院の受付で、初めての受診である旨を伝えると、窓口の職員は「どこかの医療機関からの紹介状をお持ちですか?そうでなければ初診料として5000円を頂戴いたしますが?」と言ってきた。

 「えっ!そんな費用がかかるの?」

 驚いた松田さんは、結局いつもの診療所を受診した。


➡解説 大病院への集中防ぐ


 日本では、誰でも好きな医療機関を受診することができる。しかし、その結果として総合病院などの大規模医療機関に軽度な病気・けがの人も行くようになり、大規模医療機関では「受診まで3時間待ち」などといったことが常態化。そのことが医師や看護師の過重労働にもつながっていた。

 そこで国では、軽度な病気・けがの場合には、近くの診療所など地域の医療機関を受診してもらうような流れを作り出そうとしている。

 2013年4月から、紹介状無しでの大規模病院受診に際しては、患者は初診料(医療機関により異なる)を負担することになったが、2016年4月以降は、国が定めた金額を基準に負担金を決める。具体的な額については現在、国で検討中だが5000円程度になる見通し。また対象となる大規模病院の定義についても、現在話し合いの最中だ。


エピソード② 病院敷地内に薬局が

 

川野さん(86歳)は、血圧が高いため月に2回近所の病院に通っている。大きな病院で常に混雑しているため、予約をしているにもかかわらず病院での待ち時間はいつも1時間以上。診療が終わって会計を済ますのにさらに30分。そして病院を出て片側2車線の幹線道路の向かい側にある調剤薬局に行って、薬をもらうまでにさらに30分待つことが当たり前になっていた。

 半日がかりの通院は体力的にも厳しいものだった。

 「待っているのは座っていればいいので大丈夫なのだが、調剤薬局へ行くのは大きな道路を渡らなければいけないので危ないし大変だ。特に、寒い日や暑い日、風や雨の強い日は体の負担になる。家に帰るバスの停留所は病院の前だから、薬局を出たら、また道路を渡らなくてはならないし……」

 ところが、ある日、病院内の駐車場の一角に新しく調剤薬局ができた。そして、いつも使っていた道路の向かい側の調剤薬局は閉鎖されていた。病院に聞くと、駐車場にできた調剤薬局でも、いつもの薬を出してくれるという。

 「病院の敷地内に薬局ができてくれて助かりましたよ。これなら道路を渡らなくていいし、帰りのバス停も近い」。そんなことを言いながら処方箋を薬剤師に渡す川野さんは、ついでに「しかし、月に2回の薬代もばかにならないな。必要な薬だとはわかっているが、どうにかならないものか」とつい愚痴をこぼした。

 薬剤師は「それならジェネリック医薬品(後発医薬品)はいかがですか?ご負担額はこれまでの半分になります。もちろん薬の効き目はこれまでのものと殆ど同じです」と勧めてきた。

 「殆ど同じ効き目の薬なのに、そんなにかかるお金が違うのですか?」


➡解説「門内薬局」増えるか


 かつては、医療機関で薬まで出してくれることが一般的だった。しかし最近は国が「医薬分業」を進めており、患者は医師から薬の処方箋を受け取り、それを調剤薬局に持って行き、薬を出してもらうことが主流になっている。このため医療機関の近くには調剤薬局があることが多い。これらは「門前薬局」と呼ばれ、大規模な病院の近くでは、何件もの調剤薬局が軒を連ねるといった光景も珍しくなかった。

 しかし、国は門前薬局を減らす方向性に動いている。その理由のひとつが高齢者をはじめ患者の移動負担の軽減だ。その一方、医療機関の敷地内で医療機関とは別の建物に開設する「門内薬局」を増やそうとする動きがある。

 また、ジェネリック医薬品(後発医薬品)とは、「薬の有効成分に関する特許が切れた薬」のこと。つまりこれまで「〇〇製薬」が製造していた薬と同等の薬を「△△製薬」も製造できることになる。△△製薬は、新薬の研究開発に膨大な費用をかけなくていいため、結果的に○○製薬の薬よりも安く製造することができる。

 安いジェネリック医薬品が普及すれば、国の財政負担も大きく減少することになる。そこで、国は今年4月よりジェネリック医薬品の価格を同等の効き目を持つ先発医薬品の半分に引き下げることを決めた。



株式会社高齢者住宅新聞社
Page Top