認知症、適切なケアで予防を

2016年03月20日

「462万人」――国内の認知症の人の数だ(2012年時点)。2025年には700万人と1.5倍に増える見通しで、深刻な社会問題となっている。「認知症は改善しない」「誰でも年をとれば発症してしまい、予防法がない」というイメージを持っている人は多いかもしれない。しかし、認知症は予防でき、しかも症状を緩やかにすることもできる。予防策をしっかり講じて、元気でいつまでもはつらつとした生活を送りたい。一口に認知症といっても様々な種類がある。詳しく紹介しよう。


〇アルツハイマー型


 以前は穏やかだった赤江さん(70歳)。2年前からだんだん頑固になってきたと家族は感じている。そんな赤江さんは最近、物忘れに度々悩まされている。

「お父さん、さっき話したグラウンドゴルフの件だけど」

「グラウンドゴルフ?そんな話ししてないぞ」

「いやねぇ、つい2分前に一緒にグラウンドゴルフに行こうって約束したじゃない」

「そんな約束はしてない!」

 2分前に話したことを忘れてしまう、それもどんな約束をしたのかを忘れるのではなく、約束したこと自体を忘れてしまっている。少し時間が経つと「そういえば、約束したな」と思い出すことが多くなってきた。

 更に、最近道に迷うことも増えた。毎日散歩に行く公園から、どうやって自宅まで帰ればいいのかわからなくなってしまうようだ。家族は「何かおかしい」と不安に感じる毎日を送る。


解説


 赤江さんの「約束したこと自体を忘れている」状態は、単なる「物忘れ」ではなく「認知症」の可能性が高い。物忘れは「何かを忘れている」と感じるが、認知症は「忘れていることを忘れている」状態を指す。

 認知症の人の多くがこのアルツハイマー型で、発症は女性に多いとされている。脳の萎縮・神経細胞の減少などが特徴だが、はっきりとした原因はわかっていない。

 発症と進行は比較的緩やかに、そして徐々に悪化していく。多くの場合、病気の進行とともに「最近のことを忘れる」から「昔のことを忘れる」と変化し、次第に過去の記憶を失っていく。早い段階から頑固になる、自己中心的になるといった人格的な変化が起こり、それと同時に睡眠障害や幻覚症状といったアルツハイマー型のサインが出る。早期にサインを見つけることで、症状を緩和することが可能だ。


〇脳血管性  


 3年前に脳梗塞を患った青柳さん(73歳)。退院してからというもの、いきなり泣いたり怒ったりと感情のコントロールができづらくなっている。「今日は少し肌寒いね」と天気の話題を出しただけなのに、なぜか泣いてしまうことも。

「天気の話を出しただけなのにどうして泣いてしまうの?」

「悲しくなくても涙が出てしまうんだ」と青柳さん。

ほかにも、退院前は毎日手伝ってくれていた家事や洗濯をしなくなり、ボーっとする日が続く。一方で、いつも通りに手伝ってくれる日もある。服を前後逆さまに着ることも増えた。

「手伝いたくないからしないというわけじゃないのよ。何か様子が変」と家族は首をかしげる。


解説


 アルツハイマー型に次いで多いとされているのがこの脳血管性。脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などの脳の血管の病気により、神経細胞が死んでしまい発症する。症状が良くなったり悪くなったりを繰り返しながら進行することが特徴。脳梗塞といった発作が起きる度に症状が悪化する。

 また、障害を起こした脳の場所によって症状が変わってくるのも特徴だ。


〇レビー小体型 


 黄瀬さん(85歳)は最近、「蛇が部屋にいる」と訴えることが増えた。友人が部屋を訪ねると、「あっちへ行って!」と部屋の中央を見つめてはらいのけるしぐさをする黄瀬さんが。しかし、そこに蛇はいない。

「黄瀬さん、蛇なんかどこにも見当たらないよ」

「そこにいるじゃない。見えないの?」

 いくら探してもいない。はらいのける仕草を続ける黄瀬さんに、友人は「もしかすると…」と認知症を疑う。


解説


 レビー小体型は1976年に日本の小阪憲司氏(現横浜市立大学名誉教授)らによって発見された。男性が発症する場合が多く、女性の約2倍と言われている。幻覚や手の震えなどがあることから、精神疾患や薬物依存症と間違われることが多い。そのほか、動作が遅くなる、筋肉がこわばる、身体のバランスを取ることが難しくなるなどの症状も出る。物忘れの症状は比較的少ない。顔の表情が乏しくなることも特徴だ。


〇前頭側頭型  


 デイサービスに通う緑川さん(85歳)は、決まって3時になるとデイサービスから出ようとする行動が頻繁に見られるようになった。デイサービスの利用時間は5時までの契約だ。

「3時になると出かけたくなるのはどうして?」

「どうして?」

「答えたくない?」と職員。

「答えたくない?」

 緑川さんは職員の言葉を繰り返すのみ。出かけようとする理由を聞くことができない。

 ある日、そのまま出かけさせて後をつけていくことに。職員の心配をよそに迷子になることはなく、同じコースを歩いて帰ってきた。翌日も、その次の日も、後をつけていったがちゃんとデイサービスに帰ってくる。それからは、職員は出ていこうとする緑川さんを制止することはなく、3時になると緑川さんについていき後ろからそっと見守るようになった。

 ただ、ほかにも心配事がある。それは、テーブルの上にあるほかの利用者の分のお菓子などを全て食べてしまったりすることだ。

「それ私のよ」とほかの利用者が注意すると、「私のだ!」と叩く仕草も出てきた。

「穏やかだった緑川さんがほかの利用者を叩こうとしている。これは認知症かもしれない」職員は医師の診断を仰ぐよう家族に伝えた。


解説

 

 前頭側頭型認知症は若い人でも発症する認知症。頭の前にある前頭葉と横にある側頭葉の委縮によって発症する。前頭葉は物を考えたりする中枢的な役割を持った場所。感情をコントロールし、理性的な行動ができるようにしたり計画を立てたり、状況を把握する機能を持つ。前頭側頭型では、物忘れはあまり見られず、同じ時間に同じ行動をするなどの規則性がみられる。また、気性が荒くなり暴力的になることもある。


 

株式会社高齢者住宅新聞社
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